頭の体操、考察のお時間です。
「エイリアン:コヴェナント」とは2017年に日本で公開された映画であり、エイリアンシリーズの1つです。
設定はエイリアンのルーツを描いた「プロメテウス」の続編で約10年後の話なので、時系列的には2つ目の物語になります。
ネタばれあり。
ウェイランドとデヴィッドの関係
冒頭はピーター・ウェイランドとアンドロイドのデヴィッドの会話で始まります。
この映画の立ち位置とウェイランドの見た目から、このアンドロイドは前作のプロメテウス号に乗った「デヴィッド8」だと考えることが出来ます。
彼がいつ誕生したのか正確な時期はわからないですが、「プロジェクト ・プロメテウス」が本格的に始動したあたり、おそらくウェイランドがまだ80歳前後の時だと推測できます。
ちなみに、ウェイランドは前作の最後で死んでしまいましたが、大企業のウェイランド社を一代で作り上げたクッソ天才です。
起業家としての力があるだけではなくて、実は自身でノーベル賞をとっちゃうくらいのとんでもない人なんです。
そして、この時点ではウェイランドに子供がいないようです。
※前作に出てきたヴィッカースは彼の娘という設定ですが、プロメテウス時の彼女の年齢は20代前半くらい?なのでまだ生まれてないと思う。
ウェイランドは超絶天才イケメン金持ちですが、なぜか結婚はしていないようです。
天才ゆえの事情なのかもしれませんが、もしかして子供ができにくい体だったとか、そんな事情があるのかもしれません。
自分の子孫の代わりに「アンドロイド開発」へ心力を注ぎ、息子と言えるようなほど完成度の高い「デヴィッド」を作り出すことに成功した。
とも考えられますね。
デヴィッドという名前
アンドロイドはウェイランドに名前を聞かれ、部屋のダビデ像を見ながら「デヴィッド」と名乗ります。
この「デヴィッド」という名前は「ウェイランドが自分に息子が生まれたときのためにとっておいた名前」ということなので、その時アンドロイドが考えたのではなく最初から記憶として登録してあったと考えるほうが自然です。
名前の由来は部屋に石造を飾ってるくらいなので、ミケランジェロのダビデ像から取ってるのは間違いでしょう。
このダビデという人物は旧約聖書の中に登場する古代イスラエルの王であり、少年時代には巨人ゴリアテと戦って勝利した英雄として書かれています。
ダビデ像はまさに石を巨人に投げようと狙いを定めている状態を現した像です。
デヴィッドはプロメテウス後にエンジニア(巨人)を皆殺しにしましたが、名前からもそういう宿命を背負っていたように思います。
まぁ、あちらの国では一般的な名前なんでしょうが。
アンドロイド・デヴィッドの知識はあいまい
生まれたばかりのデヴィッドはピアノを弾きます。
ワーグナーの楽曲の中から選んだのは「ヴァルハラ城への神々の入城」
この楽曲は「ラインの黄金」という4部構成の楽劇最後の曲です。
詳しい内容までは分からないですが、あらすじは神々と小人や巨人がライン川の黄金をめぐって起こした争いの物語です。
しかも、その内容は神というにはなんともくだらない本当に身勝手な理由。
さんざん争った結果、最後は巨人に建てさせた城の中に神々が入っていくわけなんですが、その時の音楽がこの曲です。
単体で聞くとすごく壮大な曲なんですが、この物語の内容から察するに、実はそんなに神々しい様を表現しているわけではなく、むしろ嘲笑のようなイメージが含まれてると想像します。
ちなみに、神々が城に入った後、最後に火の神だけは(こいつら、マジで危険だわ。焼き払いてぇ…)と思って城には入って行きません。
ライン川の黄金を守っていた乙女たちも、金がなくなったことを悲しみ(神なんて言ってるけど、あいつらは嘘つきで卑怯者だ。)と非難しています。
おそらく、デヴィッドはそういう内容までは知らないんだろうと思います。
映画の最後にも、デヴィッドはコヴェナントの中でマザーに同じ曲を流すように指示しますが、その時は「ラインの黄金 第2場」と言っています。
wikiで見るかぎり「ヴァルハラ城への神々の入城」は第4場なので、これも間違いです。
デヴィッドは何もかもうまく事が運んで自分を神と重ねていますが、実際は自分の身勝手な欲求に突き動かされただけで、自分の想像する神ではない、むしろ「ラインの黄金」に出てくるしょうもない神々と同じという事なんでしょうか。
そういう所は、むしろ人間らしいと感じます。
本当の意味での息子
ピアノの後、ウェイランドはデヴィッドに向かって
「私と息子のお前で、人類の起源の謎を見つけよう。」
と言いますが、デヴィッドは
「自分の創造主はウェイランドだし、あなたは死ぬけど、アンドロイドの私は死なない。もうすこし考えさせてほしい。」
とちょっと嫌そうです。
また、反論されてイラっと来たのかウェイランドは、主従関係を確認するようにデヴィッドに自分のすぐ横にあるお茶を入れるように命令します。
その時、デヴィッドは怪訝そうな顔を見せます。
どちらもアンロイドというよりは明らかに意思を持った人間のような反応です。
これらのことから、デヴィッドがすでにウェイランドが想定していたようなアンドロイドではなく、本当に人間に近い“個を持った存在”だということが分かります。
アンドロイドに自分の息子のために取っておいた「デヴィッド」という名前を付けたのは、やはり自分の意思を継いで人類の起源を解明してくれる「息子」が欲しかったからですが、限りなく人間に近いアンドロイドを作った結果、素直に親の意見を聞くよう存在ではなくなってしまった。
ただ逆に考えれば、息子が自分のしたいことや独自の夢を持つのは当然のことであり、本当の意味での息子ができたということかもしれません。
で、ここから本編に入ります。
コヴェナント号について
メインの話は「入植船コヴェナント号」が、2000人の入植者たちを連れて目的地の「オリガエ6」に向かってる途中でトラブルに逢い、乗組員たちが起こされるところから始まります。
船にはデヴィッドと同じ顔をしたアンドロイドが乗っていますが、彼は「ウォルター」です。
デヴィッド8から改良された最新版です。
入植船のコヴェナント号にかかわる情報
- 2104年12月5日
- 乗組員:15人
- 入植者:2000人
- 胎芽:1140体
- 目的地:オリガエ6
- 到着予定:7年4ヶ月後
コヴェナントの由来
船名のコヴェナント(Covenant)には複数の意味がありますが、これが意味するのは聖書にある神と人との「聖約」の意味だと推測されます。
聖約にもいくつか種類がありますが、この船から想像できるのはやっぱり「ノアの箱舟」です。
かなり有名な話なのであらすじは割愛しますが、聖約とは「神の”言いつけ”を守れば、お前たちの今後の安全は保証する。」的なこと。
言いつけは7つあります。
- 偶像崇拝しないこと。
- 神をののしらないこと 。
- 司法裁判所を設立すること。
- 殺人を犯さないこと。
- 姦通、獣姦、または性的不道徳を犯さないこと。
- 盗まないこと。
- 生きている動物から引き裂かれた肉を食べないこと。
はたして、今回のコヴェナント号に乗っている面々はこの言いつけを守っているのか?
船長ジェイコブが亡くなったことによって、繰り上がり船長になったクリス・オラムはかなり信心深いようです。
会社からも「信心深い人間は的確で理性的な判断を下せない。」と言われたと嘆きます。
おそらく、それを理由に船長ではなく副長になってしまったんでしょう。
また、この事故の原因についての会話からも信心深さがわかります。
ウォルター「近くの星の形成に伴う衝撃波です。」
オラム船長「なぜこのような事態になったのか調べろ。」
ウォルター「偶発的で局地的なもの、突発的なフレアを感知するのは不可能です。」
ファリス 「不運だった。」
オラム船長「良いかファリス、運なんて信じないし興味もない。俺がみんなに求めるのは能力と備えだ。運なんかじゃない。」
「観察、熟考、信仰、決断力によって、未知の航路を進むことができる。」
超信心深い。
船の名前からすれば一番最適な人間ですが、会社にそう判断されなかったのは皮肉です。
ちなみに今の人間は全部破っているのでアウトですね。
事故の原因はニュートリノバースト?
コヴェナント号の受けた被害はニュートリノバーストそのものではなく、後に来る衝撃波によるものだと推測します。
ニュートリノというのは原子よりも小さいもので、物質を構成する最小の要素だそうです。
電荷がないのでほとんどの物に影響を与えない、つまりそのまま通過するといいます。
ということは、ニュートリノ自体の衝撃がそれほどあるとは思えないです。
しかも速度も光と同等、またはそれ以上の速度で進むそうなので、あの衝撃波がニュートリノだとするとマザーが初めに感知したのは一体何だったのか?どういった方法で感知できたのか?というのがわかりません。
なので、船の近くで星が誕生した時に発生するニュートリノバーストを感知して、マザーが警告を出した十数秒後に何らかの衝撃波を食らったと考えたほうがしっくりきます。
まぁ、星の発生でニュートリノが発生するのかどうか知りませんが、衝撃波を食らったにもかかわらず、あの程度の損傷で済んだのは超運がいいですね。
そもそも、コヴェナント号の動力源はウェイランド社が開発した「原ラムダ核融合(RLF)」で動いているようですが、なぜセイルを広げて電力をチャージをしていたのか不明。
セイルは「ソルティス」といわれる自社製の太陽光発電なんでしょうけど、核融合しているのに外から電力供給する必要があるとは思えない。
ジャネット・ダニエルズとジェイコブ船長
あと気になったのは、今回ヒロイン「ジャネット・ダニエルズ」です。
船長の「ジェイコブ・ブランソン」の妻のようですが、夫婦なのに別姓です。
アメリカでは別姓が結構浸透しているようですが、わざわざ主人公を別姓にするのはどんな意味があるのか。
ダニエルズが「ジェイコブがクライミングしている動画」をタブレットで見ているシーンがありますが、そこでジェイコブは「君もここに来いよ、何も約束できないけど愛している。」と言いいます。
本来、キリスト教では「夫婦一体の思想」というのがあるので、結婚したら同姓という考えが基本のようですが、彼らは「夫婦だからこう」というような慣習にとらわれていないカップルであったとも受け取れます。
コヴェナント=(ノアとの7つの)聖約に直接書かれているわけではないですが、キリスト教の慣習を守らないということは神を信じていないと思われてもしょうがないですね。
そう考えると、謀反者が船長をしたコヴェナント号がトラブルにあったのは必然といえるかもしれません。
そもそも、事故が起きなければこの惑星に気付くことはなかったでしょうからね。
補足ですが、ダニエルズ役のキャサリン・ウォーターストンの実際の身長は182cmでスタイル抜群。
映画の中ではそう見えないのは、さすがハリウッドの力ですね。
本ページの情報は20年6月時点のものです。
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