エイリアン:コヴェナントについての考察(こじつけ)とツッコミどころ 2/2

 

エイリアン:コヴェナントについての考察と突っ込みどころ1の続きです。

ネタばれあり。

 

オラム船長の嘘つき

船の修理をしている時に惑星からの通信(ノイズ)を受信します。

ノイズの中にはジョン・デンバーの「カントリー・ロード」を誰かが歌っている声がする。

まさか!?こんな宇宙で?と船員の興味はその惑星へと移ります。

 

「カントリー・ロード」は日本だと「故郷へかえりたい」と訳されていますが、その名の通り故郷を懐かしく思い口ずさんでしまうような歌です。今でもいろんな人たちにカバーされるほど愛されています。

日本で言えば「上を向いて歩こう」とかその辺でしょうか…

しかも、その発信源の惑星を調べてみると、10年かかって見つけ出した「オリガエ6」の条件よりも良さそう。距離的にも2、3週間で行ける。

これは奇跡と呼べるような発見です。

孤独と不安の宇宙空間で、自分と同郷の人が歌うカントリー・ロードが発信されている。

これは行って確かめたくなる気持ちも分かります。

 

ただ人類移住計画の責任者でテラフォーミングの専門家であるダニエルズだけは、人間が住める惑星を探す難しさとその確率の低さを十分分かっていて危険だと抗議します。

「こんな星に人間がいるわけない。」
「突然現れた惑星が“理想的な星”だなんて出来すぎている。」
「何が待っているかわからない。危険すぎる。」

でも、オラム船長は

「見落としていただけ。」
「目の前のチャンスを逃がしてはいけない。」
「可能性に欠けるべきだ。」

と引きません。

 

信号が発信されているということは、確実に何かがあるとは思います。

でも、たしか冒頭で「運なんて信じないし興味もない。観察、熟考、信仰、決断力によって、未知の航路を進むことができる。」って言ってましたよね?

こんな幸運。運じゃないの?

まぁそんなに突っ込むわけではないですが、ちょっと気になりますよね。

 

ちなみにダニエルズは「正式に抗議します。」と言いますが、船長は「じゃあ、記録に残す。」とだけ言いました。

「正式に」というのは本来はどういう事をするべきなのか?ここが分かりません。

何か会議体を設けるのかな…

 

未知の惑星に危機管理の概念ゼロ

何とか無事に小型の着陸船で星に降り立ちますが、この人たちは普通の装備でハッチを開けて探索に出ていきます。

この星の大気とか気温なんかはセンサーで分かるとしても、未知の病原体とか野生動物なんかへのリスクは完全に考えていないですね。

 

乗員のモラル低下

煙草を吸いに行ったエドワードが黒いイチジクのような物を踏んでしまい、病原菌に最初に感染します。

これから自分の星になるかもしれないのに、その森の中に煙草をポイ捨てするエドワード。

多分、お前のそのモラルのなさが死を招いたと行っても過言ではない。

残念ながら自業自得としか思えないよ、エドワード。

 

感染した患者をめっちゃ触る

急に体調を崩したエドワードと、それを介抱するカリン。

明らかに異常な状態の彼を普通に支えます。

シュババッ!!
© 2020 Twentieth Century Fox Film Corporation.

そのまま船内の医療部屋まで運びますが、そこら中に触ってますよね。

宇宙船のクルーって危機的状況の訓練はしないんでしょうか?

ノリが海外旅行って感じです。

 

まぁ、用意周到だと映画が進まないのは分かりますけどね。

 

エイリアンの成長速度早すぎ問題

これはエイリアンシリーズ通して言えることなんですが、エイリアンの成長が早すぎます。

成長が早すぎるというか質量が増えすぎです。

 

最初は胸から出てくるくらい小さかったのに、次回お目見えするときには人よりデカくなっています。

何分後ですか?
© 2020 Twentieth Century Fox Film Corporation.

「体重を増やすには外から何らかの栄養を摂取しないといけない」というのがこの世の基本理念です。

背の高いやつ、身体のでかいやつ、ムキムキのやつ、大体たくさん食っています。

もちろん、例外もいますがそういう人はごく少数です。

逆にたくさん食っているのに痩せてるやつ、小さいやつは結構いるかもしれませんが。

 

でも、あんなにデカくなるには何を摂取しているんでしょうか?

エイリアンの外骨格は硬くて、体内には強酸性の血液が流れているので酸に強いです。

酸に強いといえば、ガラスとかセラミックくらいしか頭に浮かびませんが、その原料となるのは土とか砂とか?エイリアンはそこら辺の物質を食うことで身体を成長させることが可能なのかもしれません。

 

リドリースコットは猫が好き

デヴィッドがウォルターに言った言葉。

「私と霧は小さな猫の足でやってくる。(Me and fog come little cat feet.)」

これはカール・サンドバーグ(Carl Sandburg)の詩:霧(Fog)を引用したようです。

「The fog comes on little cat feet.」

この詩の引用にはあまり意味はないと思いますが、初代のエイリアンにも猫のジョーンズ(通称:ジョンジー)が出てくるし、たぶんリドリー氏は単純に猫が好きなんでしょうね。

 

デヴィッドの勘違い

エンジニアを皆殺しにした時の情景を思い出しながらデヴィッドが言います。

「我が名はオジマンディアス、王の中の王。汝ら強き諸候よ、我が偉業を見よ。そして絶望せよ。」

 

ウォルターが続けます。

「他には何も残らぬ。巨大な遺跡の残骸と、果てしなき荒涼が遥か彼方まで広がるのみ。」

 

「バイロン!1818年の詩だ。」と、デヴィッド。

 

デヴィッドが口にした詩は「オジマンディアス」

ソネットといわれる14行詩なんですが作者は「パーシー・ビッシュ・シェリー」です。

ウォルター(この人間違えてるやん…)
© 2020 Twentieth Century Fox Film Corporation.

あとでウォルターも間違いを指摘するんですが、バイロンはパーシー・シェリーの友人なんです。

 

ちなみに全文はこちら

古代の国エジプトから来た旅人は言う。
胴体のない巨大な石の足が二本砂漠の中に立っている。
その近くには半ば砂にうずもれた首がころがり、顔をしかめ、唇をゆがめ 高慢に嘲笑している。
これを彫った彫師たちにはよく見えていたのだ。
それらの表情は命のない石に刻み込まれ、本人が滅びた後も生き続けているのだ。
台座には記されている。
「我が名はオジマンディアス 王の中の王 全能の神よ我が業をみよ そして絶望せよ」
ほかには何も残っていない。
この巨大な遺跡のまわりには果てしない砂漠が広がっているだけだ。

I met a traveler from an antique land
Who said: “Two vast and trunkless legs of stone
Stand in the desert . . . Near them, on the sand,
Half sunk, a shattered visage lies, whose frown,
And wrinkled lip, and sneer of cold command,
Tell that its sculptor well those passions read
Which yet survive, stamped on these lifeless things,
The hand that mocked them, and the heart that fed:
And on the pedestal these words appear:
‘My name is Ozymandias, king of kings:
Look on my works, ye Mighty, and despair!’
Nothing beside remains. Round the decay
Of that colossal wreck, boundless and bare
The lone and level sands stretch far away.”

Ozymandias BY PERCY BYSSHE SHELLEY

この詩が表現しているのは「オジマンディアスの偉大さ」ではなく「政治的権力への批判」です。

どんなに強大な権力も、自然の力や時の流れには逆らえず、永久に続くわけではない。

本当に永続的に価値があるものは「芸術」だけ。

そういった詩です。

 

はたして、デヴィッドはこの詩のことをどのように感じていたのでしょうか?

 

エイリアン:コヴェナント
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