【細胞核オーバーロード】というトレーニング方法。
分かりやすく仕組みをまとめてみました。
※英語だとNUCLEUS OVERLOAD
ある特定のトレーニングをすることで、アナボリック・ステロイドにも匹敵する効果が得られるという理論です。
情報の出先はおそらくアメリカでしょう。
大体筋トレ情報はアメリカが最先端だと相場は決まっていますから。
細胞核オーバーロードは非初心者向け
まず初めに、この細胞核オーバーロードというトレーニング方法は初心者には適していないとされています。
少なくとも1年以上真剣かつ定期的にトレーニングをしているような方たちを対象にしています。
その理由としては以下の2点。
筋肉以外にも負担がかかる
私たちの体は筋肉だけではなくて骨や関節、靭帯や腱など、色々な組織で構成されています。
筋肉は傷ついても比較的短期間で回復し、より強化されて治りますが、他の組織は急に過度な負荷を与えると致命的な故障につながる可能性が高いです。
今までトレーニングをしてこなかった初心者がこの方法を取り入れた場合、筋肉が肥大するより先に身体を壊してしまう可能性が高まります。
逆に言えば、定期的にトレーニングをしている人たちは適切な負荷によって筋肉以外の組織も十分に強化されているとも言えるわけです。
初心者の筋肥大は爆発的
これは非常に有名な話です。
そもそも、初心者は通常の筋肉トレーニングを行い、適切な食事を摂ることで【爆発的な筋肥大】が期待できます。
わざわざ最初からトリッキーな方法を取り入れなくても、基本に忠実なトレーニングをするのがおすすめです。
トレーニングに対する知識や感覚を覚えるにも最適ですからね。
細胞核オーバーロードの具体的な方法
それでは本題に入りましょう。
このトレーニング方法の特徴として、以下の3ステップです。
- 狙った対象部位を1ヶ月間毎日トレーニングをする。
- その後の1~2週間は休養をとる。※その際、対象部位のトレーニングは一切しない。
- 休養の後は通常のトレーニングに戻る。
これだけです。
そして、この最後の 通常トレーニングを数週間から数ヶ月間することで、爆発的な筋肉肥大が望めるというわけです。
ただ一つ気をつけてもらいたいのは、1ヶ月毎日同じ部位をトレーニングするということは確実に疲労が蓄積されるということ。
高重量で限界まで攻めるような高強度のトレーニングを毎日続けるとどうなるか?
先に書いたように故障につながる危険性が高くなるのは明らかですよね。
そのため、高重量で行うのは最初のみ。
残りの期間は中~低重量、高回数でボリュームを稼ぐようなトレーニングをし、筋肉に負荷を与えることを勧めています。
なぜ【細胞核オーバーロード】が有効なのか?
とは言っても、現在の常識からいえば毎日同じ部位のトレーニングはオーバーワークになり✖
では、なぜ「細胞核オーバーロード」という方法が有効だと言われているかその仕組みを説明します。
この原理を理解する前提として、 通常の筋肥大の仕組みを知る必要がありますので、まずはそこから説明しましょう。
なぜなら、根本的な筋肥大の原理は同じなのです。
筋肥大の仕組み
今までのワークアウトの常識は
- トレーニングによって筋線維が傷つく
- 休息によって修復される
- 以前より強く回復する
というサイクルによって筋肥大が起きるとされていました。
そして、このサイクルの中で「細胞核」が筋肥大にとって非常に重要な役割を持っています。
ご存知の通り、筋肉とは筋繊維(筋線維)の集まりで出来ています。
筋細胞が細長い細胞なので筋繊維と言っていますが「筋繊維=筋細胞」です。
実は筋細胞には他の細胞にはない特徴があります。
それは「一つの細胞の中に数多くの細胞核を持っている」ということ。
通常、一つの細胞には一つの細胞核しかありませんが、筋細胞の中には細胞核がたくさん存在します。
細胞核はその名の通り細胞の「核」であり、細胞の働きをつかさどる司令塔のような存在となっています。
筋肥大を起こすには筋細胞(筋繊維)を太くする必要がありますが、その太くする命令を出すのが細胞核というわけです。
さらに、筋細胞の周りには「衛星細胞」という、細胞核になり得る「細胞核のスペア」のようなものも存在します。
この衛星細胞は通常時は特に仕事もせず沈黙しているのですが、トレーニング等によって筋細胞が傷つくと活性化・分裂し、細胞核に変わります。
そして、変化した細胞核は筋細胞に入り込み、休息とともに損傷した筋細胞をより大きく強く修復します。
この一連の働きが、結果的に筋肥大につながります。
※図では緑色の衛星細胞が減っていますが、実際は分裂するので減らないらしい。
以上のことから分かるように、筋細胞を修復するためには細胞核の増加が必要になるわけです。
つまり「成長した筋細胞内には多くの細胞核が存在する。」ということが言えます。
まずはこれが重要です。
【マッスルメモリー】一度充填された細胞核はなかなか減らない
そして、もう一つ重要なことがあります。
一度トレーニングをして太くなった筋肉を手に入れた場合、トレーニングを長期間しなければ当然筋肉は細くしぼんでいきます。
しかし、またトレーニングを再開すればより短期間で以前の状態に戻すことが可能です。
例えば…
筋トレ初心者があるマッチョレベルまで到達するまでに10年かかったとします。
しかし、何らかの理由によりトレーニングを止めていた場合、徐々に身体は非マッチョになっていきます。
そんな彼がまたマッチョになるべくトレーニングを再開した場合、元のマッチョに戻るには圧倒的な短期間でゲインできるのです。
このような現象のことをトレーニー達はマッスルメモリーと呼んでいます。
このマッスルメモリーが起こる原因として
肥大した筋細胞の中にある「細胞核」の数は筋細胞が細くなっても減らない。
という事が挙げられます。
先にも書いたように、太く成長した筋細胞の中には「成長の証である細胞核」がたくさん存在していますが、トレーニングを長期間止めれば、当然、筋肉自体は細くなっていきます。
ところが、筋肉が細くなったとしても一度増えた細胞核の数はなかなか減らないのです。
その結果、「細胞核はの数は多いのに筋細胞自体は細い」という奇妙な現象が起きます。
この状態で再び筋力トレーニングの刺激を受けると、細胞核は過敏に反応し、筋細胞を本来の太さまで修復させるべく働きます。
これが、通常の筋肥大のスピードよりはるかに短期間で成長する仕組みです。
筋肉の記憶=マッスルメモリーというわけですね。
細胞核オーバーロードの原理
これまでのおさらいをすると、
- 筋細胞を太くさせるには多くの細胞核が必要
- 一度増えた細胞核はなかなか減らない
- 細胞核が多く存在する筋細胞は急激な成長をする
ということが分かりました。
言い換えれば、
【細い筋肉でも、あらかじめ多くの細胞核を取り入れることが出来れば、その後のトレーニングによって通常では考えられないほどのスピード・効率で筋肥大が可能になる。】
という事になります。
つまり【細胞核オーバーロード】という言葉は、筋細胞の中にあらかじめ細胞核を多く取り込む(オーバーロードする)という意味です。
では、なぜこのトレーニング方法で筋細胞の中に多くの細胞核を取り込むことが出来るのかという話になりますが、以下のサイトに参考になる記事を見つけました。
米国国立医学図書館 国立衛生研究所
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2930527/
かなり前の情報ですが、私の理解が正しければこうです。
- 筋細胞に過負荷を加えると、ある日数までは筋肥大に先行して細胞核の数が増え続ける。
- さらに過負荷を続けると筋細胞の断面積は減ったが、細胞核の数はあまり減らなかった。
「筋肥大の仕組み」のところで気付いたかもしれないですが、実は細胞核は筋細胞が修復される前に増えているんですよね。
この実験の結果を合わせて考えると、
筋細胞の肥大を待たずに新たな刺激を加えれば、細胞核は増え続ける。
ということが言えます。
この原理を利用するのが、細胞核オーバーロードの正体です。
- 連続した過負荷を与え続けることで、先に上限まで細胞核を筋細胞の中に取り込んでおく。
- しっかり休養する。
- 通常のトレーニングを再開すると爆発的な筋肥大が期待できる。
理屈が分かると、意外と理にかなった方法のような気がしてきますね。
ちなみに、老化に伴って細胞核を作り出す機能も低下していくらしいので、若いころからトレーニングを積んだ方がいいのは間違いありません。
期間については個人による
冒頭では1か月と書きましたが、この期間については疑問が残ります。
要は細胞核の数を増やせばいいわけなんですが、筋トレにおける最適な重量や回数、食事の質などは、どれも個人の特性によるはずです。
ということは、細胞核の増える刺激の強度や期間についても個人差があって当然です。
重要なのは、今までは毎日トレーニングを続けることがあまり良くないとされていましたが「実は細胞の中ではせっせと細胞核が増えていた例がある」ということなんです。
それを踏まえて、あまり無理をなされないように。
以前、私が勤めていた工場に、やけに前腕が太い人がいました。
筋トレをしているような感じでもなかったのですが、なぜそんなに太い前腕をしているのか聞いたことがあります。
すると彼は
「毎日重い鉄板を運ぶ仕事をしていたらこんなになってしまった( ´∀` ) 」
「入社の時は細かったんだけどね」
と笑っていました。
彼のように、毎日の重労働で腕に細胞核がオーバーロードされてしまった例はどこにでもあるでしょう。
そう考えるとこの仕組みを信じてみる価値はありますね。
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