感染病の予防や花粉症などでマスクを使用すると思いますが、どのマスクが何に効果があるのか、何となく使っていることも多いでしょう。
まず最初に、厚生労働省の新型インフルエンザ流行時のマスク使用に関する考え方の抜粋を載せておきます。
- 症状のある人が、咳・くしゃみによる飛沫の飛散を防ぐために不織布(ふしょくふ)製マスクを積極的に着用することが推奨される(咳エチケット)。
- 不織布製マスクのフィルターに環境中のウイルスを含んだ飛沫がある程度は捕捉されるが、感染していない健康な人が、不織布製マスクを着用することで飛沫を完全に吸い込まないようにすることは出来ない。よって、咳や発熱等の症状のある人に近寄らない(2メートル以内に近づかない)、流行時には人混みの多い場所に行かない、手指を清潔に保つ、といった感染予防策を優先して実施することが推奨される。
要は、通常の不織布のマスクは
- 他人に移さないため
- 飛沫はある程度しか防げませんよ
ということのようです。
確かにマスクを付けていても、完全にフィットしているわけじゃないし、隙間から侵入して来るだろうことは分かります。
でも、それでは面白くないのでここからは「防ぎたい物の大きさ」と「マスクの通過しやすさ」について考えていきます。
なお、この先に出てくる大きさの単位はμm(マイクロメートル)となります。
μm=10-6m
ウィルス・細菌・花粉・その他の大きさ
まずウイルスや細菌などの非常に小さい微生物からの感染をマスクで防ぐ場合、考慮するのは咳やくしゃみ、会話などが考えられます。
俗に言う「飛沫感染」や「空気感染」などです。
まずはこの違いから見ていきましょう。
飛沫と飛沫核の大きさ
飛沫感染というのは、咳や会話の際に水分とともにウイルスが飛び、それが体内に入り込む事で感染します。
水分を多く含み、比較的大きいのですぐに落下するので飛距離も1m程度と言われています。
一方、空気感染は飛沫から水分が少なくなり、ウイルスなどの割合の多くなったものによって感染します。
こちらは飛沫核と呼ばれ、水分の少ない分軽く、空気中を長く漂うので空気感染とされます。
図で見るとこんな感じ
表にするとこんな感じ
呼び方 | 大きさ | 落下速度 |
飛沫感染 | 5μm以上 | 30~80cm/秒 |
空気感染(飛沫核) | 4μm以下 | 0.06~1.5cm/秒 |
ウィルスの大きさ
ウイルス自体の大きさはどうでしょう?
ウイルスには種類も大きさも色々ありますが、インフルエンザウイルスの0.1μmというのがよく使われています。
ノロウイルスは更に小さく0.03μmくらいです。
ウイルスの基本的な構造は単純なもので
- 中心の核酸
- 周りのカプシド(タンパク質の殻)
から出来ています。
それ故にちょ~小さいのです。
細菌の大きさ
細菌も小さいですが、ウイルスよりは大きいです。
例えば、結核の原因となる結核菌の場合、長細い細菌なので長手方向で2~10μm程度と言われています。
細菌にも様々な種類があるのですが、一般的な細菌大きさとしては1μmがよく用いられます。
花粉の大きさ
辛い花粉症を引き起こす憎っくき花粉の大きさはどうでしょう…
各花粉の大きさを下にあげます。
- スギ:30μm
- ヒノキ:25~30μm
- ブタクサ:20μm
- ヨモギ:30μm
細菌などと比べるとだいぶ大きいです。
ということで、一番小さい20μmを防げれば良さそうですね。
マスク繊維の隙間の大きさ
次は肝心のマスクの方を見ていきましょう。
ガーゼマスク& 布製マスク
昔ながらのガーゼを何枚も重ねたマスクです。
今は布製のものも結構売ってますが、普通に織られた布やガーゼは隙間の大きさも均一ではなく、一般的にその大きさや集塵能力も明記もされていないため効果は不明です。
外からウイルスや花粉などの侵入を防ぐというより、自分の口から飛沫を出さないようにするという目的で使用するのが良いと思います。
それに、マスクをしていれば口内や鼻などが保湿されるという効果もあります。そうすれば断然防御力は高まります。
不織布(ふしょくふ)マスク
細かい繊維が縦横無尽に折り重なった不織布のマスク。
安物から高級品まで幅広いラインナップがあり、現在の主流のマスクがこいつです。
それ故に、しっかりと吟味しないと痛い目にあうかもしれません。
パッケージに「花粉やウイルスにも対応している」と読み取れるものが多いです。
ただ気をつけたいのは、何を根拠にしているかということ。
試験方法や試験機関が載せてあるのは、まぁ信用できそうですが、〇〇相当とか、99.9%カットとか、自社基準しか書いていないのはちょっと怪しいですね。
マスクやフィルターへの試験では以下のようなものがあります。
- PFE「微粒子の捕集(ろ過)効率試験」
- VFE「ウイルス飛沫の捕集(ろ過)効率試験」
- BFE「バクテリア飛沫の捕集(ろ過)効率試験」
例えばVFE「ウイルス飛沫の捕集(ろ過)効率試験」の内容は人工的に飛沫を作り出し、検査対象物を通過させるものです。
この実験で作り出す飛沫の大きさは直径およそ3.0μmのエアロゾルとのこと。
先にあげた空気感染のもととなる「飛沫核」と同じ認識でいいかと思います。
ということで
VFE試験の場合
- 飛沫
- 3.0μmまでの飛沫核
をほとんど防げるということになります。
さらにPFE「微粒子の捕集(ろ過)効率試験」では、粒径0.1μm のポリスチレンラテックス粒子を試験粒子として使用しているとのことです。
PFE試験の場合
- 0.1μmまでの粒子
をほとんど防げるということは、ウイルスにも十分効果は期待できそうです。
ちなみに試験器の上についてる「ネブライザー」というのは耳鼻科で最後に鼻や口に「しゅこー」と細かい薬剤を吹き出すやつと同じですね。
実際にウイルス対策をうたったマスクについて「 国民生活センター 」が行ったテストの結果があります。
「ウイルス対策をうたったマスク-表示はどこまであてになるの?-」
そして、この結果に対する各企業の回答もこちらにあります。
この回答はなかなか興味深いです。
粉塵マスクN95&DS2
もっとガチなマスクを希望する場合、粉じん作業などで使用する「粉塵マスク」を使用するのがいいでしょう。
N95やDS2という規格のものは0.3μm以上の粒子を95%捕集できる性能を持っています。
「PFE試験より粒子が大きいじゃないか」
と思いますよね。
しかし、これは「最も捕集しにくいと言われる0.3μmの微粒子を95%以上捕集できること」を目的にしているためです。
粒子の大きさはそれ以上でも、それ以下でも比較的捕集しやすくなるそうです。
さらに、隙間を極力なくすような工夫がされており、使用限度時間や吸気抵抗、粉塵の管理濃度などにも基準があります。
ということなので、ウイルスの侵入を防ぐ場合にも効果を期待できます。
N95 マスク(防じんマスク DS2)とは?
N95 マスクのN とは耐油性がない(Not resistant to oil)という意味であり、95 とは0.3
μm以上の塩化ナトリウム結晶の捕集効率が95%以上という意味である。N95 マスクの認定は米国労働安全衛生研究所(NIOSH)が認定している。
産業用の防じんマスクについて、わが国でも国家検定が行われており、DS2 というクラスのものがN95 マスクと同等の検定基準とされている。「新型インフルエンザ流行時の日常生活におけるマスク使用の考え方」より
ちなみに、DS2の上にはDS3、N95の上にはN99があり、捕集率も上がります。
私は実際に溶接作業でDS2のマスクを使用していましたが、結構息苦しいマスクです。
しっかり捕集するということは空気の通る隙間も狭いので仕方のないことですが、日常的な使用には適さないと感じます。
溶接ではヒュームと言われる金属の細かい粒子が発生するので、作業者はマスクをしなければなりません。
なぜなら、それらを吸い込むことによって、じん肺のリスクが上がるからです。
まとめ
これまでのサイズをわかりやすく並べるとこんな感じです。
これらもすべて、しっかりと密着していることが前提なので、調節機能の付いたものや小さすぎず大きすぎないものを選ぶのがとても重要です。
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